2025/07/10

QMKレイヤー機能で36キーで十分な理由

「36キーで足りるの?」最初はみんなそう思います

弊社がChocofiの36キー版を発表した時、よく聞かれた質問がこれでした。「36キーって、普通のキーボードの3分の1以下じゃないですか。本当に実用的ですか?」

確かに数だけ見ると不安になりますよね。でも実際に使ってみると、36キーでも108キー以上の機能を快適に使えるのです。その秘密が、QMKファームウェアの「レイヤー機能」にあります。

レイヤーって何?「見えないキー」の仕組み

レイヤーは、簡単に言うと「複数のキーボードを重ね合わせる」ような仕組みです。

例えば、透明なシートに文字が書いてあると想像してください。そのシートを何枚も重ねて、必要な時に特定のシートだけを見えるようにする。これがレイヤーの基本的な考え方です。

QMKでは、0番から31番まで、最大32層のレイヤーが使えます。通常は3-6層程度で十分です。

  • レイヤー0: 普通の文字(a, b, c, d...)

  • レイヤー1: 数字(1, 2, 3, 4...)

  • レイヤー2: 記号(!, @, #, $...)

  • レイヤー3: 矢印キーやファンクションキー

といった具合に、用途別に分けて配置します。

実は指の移動距離は格段に少なくなる

従来の108キーボードだと、数字を入力する時に指を上の方まで伸ばす必要がありました。ファンクションキーなんて、もっと遠いですよね。

36キーのレイヤーシステムなら、すべてのキーがホームポジション(指を置く基本位置)から1キー以内にあります。つまり、指をほとんど動かさずに全ての入力ができるのです。

親指の活用で小指の負担を激減

従来のキーボードでは、ShiftやCtrlといった重要なキーを小指で押していました。しかし小指は、御存知の通り一番力が弱い指です。

分割型キーボードの36キー構成なら、親指でこれらの修飾キーを操作できます。親指は最も強く、動かしやすい指なので、長時間使っても疲れません。

弊社メンバー間でも、36キーに移行してから「小指が楽になった」という声をよく聞きます。特に、一日中コードを書いている日の夕方の疲労感が全然違います。

効率的なレイヤー分けの実例

弊社が推奨している6レイヤーシステムをご紹介します:

  • ベースレイヤー(0番): アルファベットのみ | 普段の文章入力で使う文字だけを配置。QWERTYでもColemak-DHでも、お好みで。

  • シンボルレイヤー(1番): プログラミング記号 | (), {}, [], !, =, +, -など、コーディングでよく使う記号をまとめて配置。

  • ナンバーレイヤー(2番): 数字とテンキー | 1, 2, 3, 4, 5...と、計算で使う+, -, *, /を配置。

  • ナビレイヤー(3番): 矢印キーとページ操作 | ↑↓←→, Home, End, Page Up, Page Downなど、カーソル移動に使うキー。

  • ファンクションレイヤー(4番): F-キーとメディア制御 | F1-F12, 音量調整, 画面の明るさなど。

  • マクロレイヤー(5番): 自作ショートカットとアプリ切り替え | よく使うコードスニペットや、特定のアプリを開くショートカットなど。

プログラミングに特化した配置例

シンボルレイヤーでは、よく一緒に使う記号を近くに配置します。

例えば、!と=を隣に置いて、!=(等しくない)を入力しやすくしたり、<と=を近くに置いて<=(以下)を楽に入力できるようにします。

JavaScriptでよく使う=>(アロー関数)も、右手で=、左手で>を押すように配置すると、リズムよく入力できます。

学習コストは思っているより少ない

「36キーは覚えるのが大変そう」と思われがちですが、実際はそうでもありません。

従来の108キーの位置をすべて覚えるより、3-4個のレイヤーの論理的なグループを覚える方が簡単です。人間の短期記憶は7±2項目が限界なので、実は理にかなっています。

弊社メンバーの感覚としても、だいたい皆さん2-3週間で慣れていきます。最初の1週間はちょっと大変ですが、その後は急激に上達します。

縦型スタッガードによる最適化

弊社のエルゴノミックキーボードでは、縦型スタッガード配列を採用しています。縦型スタッガードとは各指の長さに合わせてキーを縦方向にずらした配置で、これにより指の動きがより自然になります。

従来のキーボードのスタッガード配列では、小指で遠いキーを押す時に手首が捻れがちでしたが、縦型スタッガードなら、すべての指が自然な位置でキーにアクセスできます。

また、格子配列を選択できるモデルもあり、論理的で覚えやすい配列を好む方にも対応しています。

ダイオードレス設計による信頼性向上

一般的なメカニカルキーボードでは、各キーに「ダイオード」という小さな部品が必要ですが、弊社のカスタムキーボードでは「ダイオードレス設計」を採用しています。

これにより、部品点数が少なくなって故障のリスクが下がり、はんだ付けも簡単になります。修理やメンテナンスも楽になるので、長く使い続けられます。

はんだ付け不要キーボードとして販売している製品ラインナップなら、技術的な知識がなくても、すぐに36キーの利点を体験できます。

お客様の実際の体験談

36キーに移行されたお客様からは、こんな感想をいただいています:

「最初は不安だったけど、1ヶ月使ったら普通のキーボードが使いにくくなった」(Webデザイナー・29歳)

「肩こりが明らかに軽くなった。手の位置をほとんど動かさなくて済むのが快適」(バックエンドエンジニア・34歳)

「旅行にも気軽に持って行けるサイズなのに、機能は何も妥協していない」(フリーランス・38歳)

ロープロファイルキーボードとしての追加メリット

弊社の36キーロープロファイルキーボードは、従来のメカニカルキーボードよりも薄型で、指の移動距離をさらに短縮できます。

低いキープロファイルにより、手首の角度もより自然になり、長時間の使用でも疲労を軽減できます。デスクスペースの節約にもなるので、狭いワークスペースでも快適に使用できます。

移行のコツと現実的なスケジュール

36キーへの移行は、焦らずに段階的に進めることが大切です。

  • 第1週: ベースレイヤー(文字入力)に集中

  • 第2-3週: シンボルとナンバーレイヤーを追加

  • 第4-6週: ナビゲーションとファンクション機能を習得

  • 第7-12週: マクロや高度機能を追加

タイピング速度としては、第1週で以前の30-50%に低下、第4週で80-90%に持ち直し、第12週で以前より20-30%向上するというパターンが一つの目安です。

重要なのは、速度より快適性を重視すること。痛みや違和感があったら、すぐに配置を調整しましょう。

キーボード専門店としての長期サポート

弊社はキーボード専門店として、36キーシステムへの移行を全面的にサポートしています。

QMK対応プログラマブルキーボードの設定から、レイヤー構成のアドバイスまで、お客様一人ひとりの使用環境に合わせたサポートを提供しています。

修理用のスペアパーツも常時在庫しており、万が一の故障時も迅速に対応できます。オリジナルキーボードメーカーとして、責任を持って長期サポートを提供します。

長期的な投資価値

36キーシステムの習得は、単なるキーボードの使い方を覚えることではありません。

  • 健康面:何より、疲労の予防効果があります。

  • スキル面:効率化思考や自動化の考え方が自然に身につきます。日常の開発業務にも良い影響を与えるはずです。

  • コミュニティ面:世界中のキーボード愛好家とつながるきっかけになります。技術的な情報交換や、新しい発見もたくさんあるはずです。

なぜ弊社が36キーにこだわるのか

弊社がエルゴノミックキーボード作りを始めたのは、手首と肩の痛みを解決したかったからです。いろいろ試した結果、36キー + レイヤーシステムが最も効果的だと確信しました。

最初は「本当に足りるのかな?」と不安でしたが、実際に使ってみると、むしろ余計なキーがない方が集中できることが分かりました。

シンプルで美しく、そして実用的。それが弊社の目指すカスタムキーボードです。

一度体験していただければ、36キーの魅力を実感していただけると思います。新しい入力体験を、ぜひ試してみてください。