2025/07/05
QMKファームウェア対応キーボードを購入する5つのメリット
QMK(Quantum Mechanical Keyboard)ファームウェアは、簡単に言うと「キーボードの動作を制御するプログラム」です。現在3,000種類以上のキーボードで使われていて、しかも完全にオープンソース(誰でも中身を見て、改良できる)になっています。
「なぜQMK対応のキーボードを選ぶべきなのか?」
実際に使ってみて、開発してみて分かった、5つの大きなメリットをご紹介します。
メリット1: 中身が全部見える安心感
普通のキーボードのファームウェアは「ブラックボックス」状態です。メーカーしか中身が分からないので、実際に何がどのようになって入力に繋がっているのかが分かりません。
QMKなら、プログラムのコードがすべて公開されています。つまり、「このキーボードが怪しい動作をしていないか」を自分で確認できます。
弊社も開発時に、他のメーカーのファームウェアを参考にさせていただくことがありますが、QMKなら堂々と学ぶことができます。
メリット2: メーカーが消えても大丈夫
たとえばお気に入りのメカニカルキーボードのメーカーが事業をやめてしまうと、当然ソフトウェアのサポートも終了。新しいOSに対応できなくなったり、設定を変更できなくなったりします。
QMKなら、世界中の開発者がメンテナンスしているので、メーカーが消えても大丈夫です。むしろ、コミュニティによって新機能が追加され続けています。
Windows、Mac、Linuxのどれでも使えますし、特別なドライバーソフトも不要です。OSを変更しても、同じ設定で使い続けられます。
メリット3: 自分好みに徹底的にカスタマイズできる
これが一番の醍醐味かもしれません。QMKなら、思いつく限りのカスタマイズができます。
例えば:
タップダンス: 1つのキーを1回押すと「a」、2回押すと「@」
レイヤー機能: Fnキーを押している間だけ、数字キーがファンクションキーに変わる
マクロ機能: 1つのキーで「git commit -m ""」と入力して、カーソルを自動で""の間に移動
弊社のQMK対応プログラマブルキーボードでよく使っているのは、ホームロー修飾キー (home row mods)という設定です。ホームポジションにある「asdf」キーを、長押しすると「Ctrl、Alt、Shift、Cmd」等の修飾キーになるように設定することができます。手の位置を変えずに修飾キーが使えるので、とても快適です。
プログラミング言語別に設定を変えることも可能です。Python用とJavaScript用で、よく使う記号の配置を変えるなんてこともできます。
メリット4: リアルタイムで設定変更できる
以前は、設定を変更するたびにプログラムをコンパイル(機械語に翻訳)し直す必要がありました。これは結構面倒でした。
でも今はVIAやVialという便利なキーリマッピングツールがあります。これらを使えば、マウスでクリックするだけで、リアルタイムにキー配置を変更できます。
Vialは完全にオープンソースで、キーボード本体に設定情報が保存されます。つまり、持ち運んで別のパソコンにつなげても、自分の設定がそのまま使えます。
「このカスタムキーボードのキーの位置、やっぱり使いにくいな」と思ったら、すぐに変更できる。この気軽さは、一度体験すると手放せません。
メリット5: 世界中の仲間と情報共有できる
QMKを使っていると、自然と世界中のキーボード愛好家とつながります。GitHub、Discord、Redditなどで、みんなが設定を共有しています。
「こんな機能を作りたい」と思ったら、たいてい誰かが既に作っています。逆に、自分が作った便利な設定を公開すると、世界中の人に使ってもらえます。
弊社も、分割型キーボードの設計で悩んだ時、QMKコミュニティの方々にたくさん助けていただきました。技術的な質問をすると、すぐに親切な回答が返ってきます。
新しい技術への対応も早く、常に最新の機能を使えます。
一般的なキーボードソフトとの違い
項目 | QMK | 一般的なキーボードソフト |
透明性 | コードが全部見える | 中身が分からない |
寿命 | コミュニティが永続サポート | メーカー次第 |
自由度 | 無制限 | メーカーが決めた範囲内 |
学習 | プログラミングも学べる | 設定方法を覚えるだけ |
弊社のカスタムキーボードでのQMK活用例
Piantor Proでは、Raspberry Pi RP2040という小さなコンピューターを使っています。16MBの大容量メモリーがあるので、複雑な設定やマクロもたくさん保存できます。このQMK対応プログラマブルキーボードなら、プロレベルのカスタマイズが可能です。
エルゴノミックキーボードとしての追加価値
弊社のQMK対応プログラマブルキーボードは、エルゴノミックキーボードとしても設計されています。分割型キーボードの利点とQMKの柔軟性を組み合わせることで、体の負担を軽減しながら、最大限の機能性を実現しています。
縦型スタッガード配列により、各指の自然な動きに合わせたキー配置を実現し、QMKのレイヤー機能により、物理的なキー数を増やすことなく、必要な機能にアクセスできます。
プログラマーとしてのスキルアップにも
QMKを使いこなすうちに、自然とハードウェアとソフトウェアの関係が理解できるようになります。組み込み系のプログラミングにも興味が湧くかもしれません。
国際的な技術者コミュニティに参加することで、英語でのコミュニケーション能力も向上します。GitHubでの協働作業にも慣れます。
何より、日常的に使う道具を自分好みに最適化する経験は、仕事での「自動化・効率化思考」にも良い影響を与えます。
まとめ:一度使ったら戻れない自由さ
QMK対応プログラマブルキーボードの最大の魅力は「自由」です。メーカーの制約に縛られず、自分だけの最高のキーボードを作り上げられます。
最初は設定が少し複雑に感じるかもしれませんが、弊社やコミュニティのサポートも充実しているので、ご安心ください。